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久留米物語

久留米物語 高良山神籠石 古代遺跡の謎解きへ誘う 高良山の山肌に連なる、約1300個の巨石。誰が、いつ、何の目的で造ったのか? 謎解きに、作家松本清張も挑んだ遺跡。

 春は新緑、秋は紅葉。四季折々の高良山は、筑後国一の宮「高良大社」への参詣や自然歩道を散策する人々で賑わいます。その車道や参道の脇に、1メートル前後の長方形の切り石が並んでいます。これが「高良山神籠石」と呼ばれる古代遺跡です。高良山の急で険しい峰と尾根の斜面に約1300個の巨石が連なっています。
高良山神籠石は、明治、大正、昭和にわたり、考古学会などを2分する「神籠石論争」の発端となりました。明治31年(1898)、ある学者が高良山中の神籠石について発表しました。久留米の人から聞いた神籠石なるものを調べたのです。
『神籠石は、ある豪族の墓地、もしくは共有墓地ではないか。ともかくこの列石は霊地として区別したものだろう』(霊域説)
これに対して、別の学者が他の山の列石遺構も調査し、主張しました。
『外敵からの防禦を目的とした山城の類である』(山城説)
霊域か、山城か。誰がいつ、何のために造ったのか。考古学会を二分する大論争となりました。昭和30年代になって、他の山で確認された土塁や列石などが、「日本書紀」にみえる朝鮮式山城と構造が似ていたことから、山城説が主流になりました。神籠石と名前のついた同様の列石遺構は、北部九州に全部で10カ所あります。高良山神籠石はその名の由来となりました。
近年の調査によれば、高良山神籠石は、天智2年(663)の白村江の戦で敗れる前後の対外情勢の中で、当時の中央政府が北部九州の防衛のために築いた山城の1つと考えられています。ところが、「日本書紀」などの正史に神籠石のことは記されていません。
松本清張は、古代史に取り組んだ著書の中で独自の説を述べています。
『神籠石が北部九州にのみあるというのは、その独自性を認めなければいけない。中央政府の意志からは離れた、北部九州の地方豪族独自の観念から生れた構築物だという見方が強まってくる。日本書紀などの記録に神籠石がないのは、民間の造営であったからだろう』
諸説が入り乱れ、どこまでも謎めいている古代遺跡です。
実は、高良山にはもうひとつの「神籠石」があります。それは「馬蹄石」と呼ばれ、高良大社の参道にあるぽっかりと穴があいた大きな岩盤のことです。高良の神が神馬の蹄跡を残したと伝わります。中世末の頃に編纂され、門外不出の古文書であった「高良記」では、この馬蹄石を神籠石といい、高良山神籠石と呼ばれている列石のことを「八葉の石畳」としています。うっそうとした山中、馬蹄石の前に立つと神聖な佇まいに圧倒されます。古代人は大きな岩盤に畏敬の念を抱いて神を祀り、神が籠る石と名をつけたのでしょう。
先人は高良山についてこう語っています。
『高良山は我らの最も敬愛する名山である。朝起きて高良山を望むと我は筑後の産なることを思い浮かべ、あの山の如く清くありたし、あの山の如く多くの史的文物を己が身にも備えたいと思うのである』
古来より高良山は霊山として知られ、その山中は遺跡の宝庫です。今日も、私たちを古代遺跡の謎解きへ誘います。

主な参考資料=「歴史散歩№20」・「史跡高良山神籠石保存管理計画策定報告書」・「高良山雑記」・「高良山の古伝承」・「遊古疑考」他

取材、執筆 オフィスケイ代表 田中 敬子

神籠石碑
高良大社・あじさい園
  • 高良大社

    【高良大社】

    西暦400年創建。厄如・延命長寿で名高く、筑後国一の宮・延喜式内名神大社・正一位と、地域筆頭の格式を誇ります。石造大鳥居、現在の本殿、幣殿、拝殿は、国指定の重要文化財です。
    社宝に「紙本墨書平家物語」(国指定重要文化財)、「絹本著色高良大社縁起」(県指定文化財)などがあり、山中の「孟宗金明竹(国指定天然記念物)」や「高良山神籠石(国指定史跡)」なども貴重なものとして保存されています。
    また、見事な眺望も見所のひとつです。

  • あじさい園

    【あじさい園】

    高良山参道の中腹にある「あじさい園」は、約1,000坪の敷地に4,000株以上の紫陽花が咲きます。毎年6月下旬には「あじさい祭り」が開催。会場では、一面紫色の紫陽花に加え、雅楽や太鼓演奏などの催しものも行われます。
    なお、「あじさい園」は、久留米市の「花と緑の名所」にも指定されています。

【住所】
久留米市御井町1
【アクセス】
・JR久大本線「久留米大学前駅」下車、タクシーで約15分または徒歩約50分
・西鉄バス(1・8)番利用「御井町」バス停下車 徒歩約30分
・久留米ICより車で約15分
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【リンク】高良大社
※本文左の「史蹟 神龍石」の碑は、高良大社宝物館東側、耳納スカイラインへ登る道沿いにあります。
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